綴るだけ

四半世紀の怠惰


冬は2番目に好きな季節だ。忌々しい春の匂いのするあの頃の、嵐の前の静けさ。静謐で神聖な期間。

しかし私は冬に弱い。床に臥すことなく過ごせた冬ののべ時間は常人の7割にも満たないだろう。毎年3学期は登校日数と欠席日数の見分けがつかなかった。

体調を崩したのが原因で悪いことが起きたのも、思い返せば毎度必ず冬だった。


去年の冬のことを思い出そうとする。なにも思い出せない。

そこまでの虚無が広がっていたとは思えない、むしろ頭ばかりが回転してなにも手につかなかったはずで、人生が引っ掻き回されて壊されて汚くてなにもなくて枝や枯葉が散らばったような道に足を踏み入れなければいけない地点でずっと立ち尽くして泣いていた。はずなのになにも覚えていない。

離人症のような感覚に陥ったのはこの時期だっただろうか。他人への妬みが自分の未熟さ故であって他人は悪くなく、悪は自分自身だけなのだと気付いた頃だっただろうか。とにかくいた場所さえも覚えていない。

サンマルクカフェで泣くのを耐えた記憶だけは残っている。


早く、早く好きな人に会いたい。会って報告をしたい。正しくない選択をしてしまいましたと懺悔して楽になりたい。

どうせもう期待はされていないだろうが。ごめんなさいと言いたい。

あなたの教え子なのにこんな不出来でごめんなさい。